この世に属さず
イエスは彼らに言われた。「あなたたちは下のものに属しているが、わたしは上のものに属している。なたたちはこの世に属し
ているが、わたしはこの世に属していない」。 ヨハネによる福音書8.21-30

ユダヤ人との間でなされた長い論争の中で、イエスは次のようなことを言われました。「あなたたちは下のものに属しているが、わたしは上のものに属している。あなたたちはこの世に属しているが、わたしはこの世に属していない」。人々はこの意味がよく分かりませんでした。皆さんはどうですか。この「下」とは何を意味しているのでしょう。あるいは「属している」とはどういうことなか。次に続く言葉は並列なので、意味は同じだと思います。「あなたたちはこの世に属しているが、わたしはこの世に属していない」。ということは「下」とは「この世」のことであり、「上」とは「この世」に属さないことを言うのでしょう。それなら「この世」とは何か、あるいはどこを指しているのだろうか。これは現在と死後の世界(天国)というような区別ではありません。そういった場所ではなく、今生きている原理、原則をどこに置いているかということです。聖書の教えを信じ、神の御心を自分の生活の基盤にするとき、その人は上に属する者であり、またこの世に属していない者。反対にそれを避けて、自分の欲望や自己中心の思いを基礎に生活する人は、下に属する人であり、不信仰なこの世だと言えます。
後にイエスは逮捕され十字架にかけられますが、その直前に弟子たちのために祈られました。このような祈りです。「わたしは彼らに(弟子たち)御言葉を伝えましたが、この世は彼らを憎みました。わたしがこの世に属していないように、彼らも世に属していないからです。わたしがお願いするのは、彼らを世から取り去ることではなく、悪い者ら守ってくださることです。わたしが世に属していないように、彼らも世に属していないのです。真理によって、彼らを聖なる者としてください。あなたの御言葉は真理です。わたしを世にお遣わしになったように、わたしも彼らを世に遣わしました。彼らのために、わたしは自分自身をささげます。彼らも、真理によってささげられた者となるためです」。イエスがこの世に遣わされたように、わたしたちもこの世に遣わされました。わたしたちが今この世で生きているのは、遣わされた者として生きている。同時にこの世に属していない者としても。
イエスはこの世を愛してくださいました。神は独り子をお与えになったほどに、この世を愛されたとあるとおりです。そのようにこの世界は神の愛の世界、神が支配する世界です。決して悪の支配する世界ではありません。しかしこの世界は罪によってゆがめられ、混乱しています。わたしたちの日常生活も同じように悩み多く、思い煩いの多い日々でもあります。そうした中にあっても、わたしたちはこの世に遣わされた者として、しかもこの世に属していない、すなわち国籍を天にもつ者として生かされています。確かにそこでは世の価値と衝突し、反発を受けることがあります。それにもかかわらず、わたしたちは真理によって聖別された者なのであり、イエスがご自身をささげられたその献身によって支えられていることを忘れないようにしたいと思います。この世に属さずにしてこの世に生きる、それがわたしたちの今生かされている場所なのです。(高橋牧師記)

