主の鍛錬を通して

 「わが子よ、主の鍛錬を軽んじてはいけない。主から懲らしめられても、力を落としてはいけない。なぜなら、主は愛する者を鍛え、 子として受け入れる者を皆、鞭打たれるからである」。    ヘブライ書12.1-13

 

 この世界にはなぜ病や苦しみなどのつらいことがあるのだろうか。神は天地万物を創造された全能者なのに。古代社会から、それは罪との関係で捉えられてきました。罪の結果としての病です。ヨハネ福音書9章に出てくる盲人がこれに相当します。この人が生まれつき目が見えないのは、本人か両親が罪を犯したからに違いないという考えは、旧約聖書以来伝統的にありました(それをイエスは否定された!)。

 現在、安倍元首相の殺害は、加害者自身ではなく、その母親、そしてその母親が信じている宗教に発展し、さらに政治にまで影響を与えています。世界平和統一家庭連合というカルト宗教です。この宗教団体に母親は10年足らずの間に1億円以上の献金をしています。しかしそれは感謝の献金でなく、恐れの献金です。病気や事故などの不幸は霊界からの知らせであり、長男の病は自殺した夫からの知らせである。そのため地獄にいる夫の霊を救わねばならないというものです。そこまでいかなくとも、親や祖先の因果が子に報いるという捉え方は今日の日本人にもあります。   

 聖書はそうではありません。苦難を信仰者の成長の時として受け止めなさいと語っているのです。それを「鍛錬」と言っています。鍛錬は懲らしめを伴う、また鞭を伴う教育です。鍛錬を受ける側にとっては、苦痛によって力を落としたり、取り乱したり、疲れ果ててしまう暗い気持ちになるものです。しかし病を初めさまざまな苦しみは、主の鍛錬、愛の鞭であり、それに耐えなさいというのです。決して罪の結果、その罰ではありません。

 「神はあなたがたを子として取り扱っておられます。いったい、父から鍛えられない子があるでしょうか。もしだれもが受ける鍛錬を受けていないとすれば、それこそ、あなたがたは庶子であって、実の子ではありません」。分かりやすい人間的なたとえです。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

 主なる神と信仰者との関係も同じです。肉の父はしばらくの間、自分の思うままに鍛えてくれます。実の父による鍛錬にも、愛情はあります。しかし人間である限り、そこには限界があり、時には過ちはあるものです。わたし自身も親として、その点反省しきりです。それに対して霊の父はわたしたちの益となるように、はるかに高い所から、広い所から、わたしたちにとって最善の方向へと導いてくださいます。「およそ鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいものと思われるのですが、後になるとそれで鍛え上げられた人々に、義という平和に満ちた実を結ばせる」。これで苦しみのすべてが説明できるわけでも、納得できるわけでもありませんが、それでもこの言葉はわたしたちにとって大きな力となります。つらいこと、苦しいことが続くと、人は気力を失い疲れ果ててしまいます。けれどもそれは全能の神が無力であるというのではなく、罪に対する罰ということでもなく、神の鍛錬なのです。神の愛の別の側面です。苦しいこと、つらいことは決して捨てられているのではなく、そこにこそ神の愛が注がれているのです。(高橋牧師記)